オススメできなかった話

ワタク記事に更新を増やす、といったところで何を書いたものかと。

せっかくだしオススメの本でも紹介しようかと思ったところで、ふと高校時代の出来事を思い出しました。

Aちゃんという友達に「なんかオススメの漫画貸して」と言われたときのこと。

本好きにとって、血湧き肉躍る言葉です。

意気揚々と「えぇよ!どんなんがいいん?」と聞けば、「なんか絵が可愛いやつ」との回答。

絵が可愛いやつか。
よっしゃ。

翌日、ウキウキと持ってきた本を入れた袋を差し出しました。
選んだのは、松本花さんの『ティンク☆ティンク』。
ちょっと絵本のような、絵も話もとても可愛いらしいお気に入りの作品です。
自信がありました。

ところが、袋の中身を確認したAちゃんは微妙な表情をしました。

「こうゆうんじゃなくって」
「あれ、あかんかった?」
「あかんていうか」
「ほなまた違うん持ってくるわ。どんなんがえぇ?」
「だから、絵の可愛いやつ」

いやこれめっちゃ絵可愛いと思うんやけど……と思ったところで、ふと質問してみました。

「Aちゃんの中で絵が可愛い漫画って何?」
「だから……『NANA』みたいな」
「『NANA』みたいな⁉︎」

思わずでかい声が出ました。
『NANA』。言わずと知れた矢沢あいさんの一作です。

いや、確かに絵は“可愛い”、けれど自分の中では「可愛い」でなく「スタイリッシュ」に分類されている作品でした。

ハッとここでAちゃんを見ました。
このAちゃんという友達、髪は明るく、メイクは眉細くばっちり、ルーズソックスに合わせた制服スカートも改良して見事に長く(なぜかうちの学校ではスカート改良には短い派と長い派がいました)、他の友達とギャルバンを結成し放課後ともなればドラムを叩くバンド女子です。

そんなAちゃんの「可愛い」は、流行りの雑誌のメイクやファッション。
対して、私の想定した「可愛い」はサンリオ方向。

教典がちがう!

衝撃を受け(©︎麻生みことさん『GO!ヒロミGO!』)、Aちゃんに伝えたいところ、
「いやサンリオは可愛いっていうか……あ、あ〜」
となり、お互い納得しました。

教訓。
オススメするって難しい。

なので、載せるとすればオススメではなく好きな作品、という括りでまいります。
という話。

この教訓から、大学に入って「なんかオススメの恋愛小説貸して」と言われた折には事前に細かく好みを聞き取り、無事ご満足いただけるものを差し出せました。
二次創作をがっつり読むようになったのはこのさらにあとですが、「解釈違い」というワードを見るとなんとなく思い出して「ふふっ」となってきたエピソードでした。

ちなみにAちゃんにはその後、水月博士さんの『悪魔のオロロン』を貸しました。全四巻。
「続きは?」
「出たら貸すね〜」

今も交流があるので、『真夜中の帝国』が発行されたら音速で買って共有しようと思います。
永遠に待ってます。

2018/9/27