真面目と真剣

部屋を片づけなきゃ、と思う方は基本的にとても真面目な方だと常々感じます。
真面目という表現でしっくりこないなら、「もっとちゃんとしなければ、と思ってる」と言い換えてもいいかもしれません。

実際のところ、本当に散らかっていてもまったく気にならないという方もいらっしゃいます。
私が直接知っている例では、片づいてないことなど気にせずやりたいことや好きなことができていて、自分に満足しているという形でした。
虚栄でなく心からそう思っているのがわかる、そういう場合は「片づけないと」という意見は野暮なものです。
片づけは生きる上で「しなければならない」項目ではなく、何か「やりたい」ことを叶えるために必要な項目なのです。


部屋が散らかっている。
ごちゃごちゃして、何がどこにあるのかわからない。
「ただいま」と帰ってきて出迎えるのも、「起きなきゃ」と開けた目が最初に映すのも、散らかった部屋。
やりたいことはあったはずなのに、やる気になれない。


心など、人の内側ばかりが注目されがちですが、環境という外側の持つ力は思ってる以上に大きいもので、今の自分に満足していない方にとって散らかった部屋は凄まじい影響力を持っています。
モノは意外とおしゃべりです。
口はないので音声は発しませんが、ずーっと片づけのできていない部屋の主を責め立てます。
これは、めちゃくちゃしんどい環境です。
自分の部屋というのは世界でも指折りの安らげる場所のはずなのに、そこにいるだけでストレスが溜まる状態。
部屋中から「おまえはダメだ」と言われ続け、心の休まる時間がありません。

忙しいと部屋が荒れていく、というのは真理です。
「部屋は心を映す鏡」といいます。その通り、部屋はあなたを映します。
頭の中がごちゃごちゃごちゃだと部屋の中もごちゃごちゃします。
そしてさらに頭の中がとっ散らかっていく、悪循環です。

でも、これを逆手に取ることもできます。

混乱した頭の中と散らかった部屋を比べると、部屋の方が整理するのはラクです。
目に見えて、手で触れるモノが原因だからです。
部屋が心を映す鏡であるならば、鏡の中側からアプローチできるということです。
そして、片づいた部屋もまた、メッセージを発します。


部屋が片づいている。
すっきりして、何がどこにあるのか全部わかる。
「ただいま」と帰ってきて出迎えるのも、「起きなきゃ」と開けた目が最初に映すのも、片づいた部屋。
やりたいことを「やろう」と思った瞬間に、すぐできる環境が整っている。


モノは意外とおしゃべりです。
片づいた部屋のモノたちは、ずっとずっと片づけのできた部屋の主を褒めて、認めてくれます。
これは、とても嬉しい環境です。
毎日帰る、寝起きする自分の部屋が絶大な回復ポイントになります。
どんなにしんどい気持ちで帰ってきても、「部屋が片づいている」というのは支えてくれる自信になります。


最初に、「真面目な方」と書きました。真面目という言葉は取り扱いが難しいのですが、それはいい意味も悪い意味もあるためです。
悪い意味でいうなら、自分の中の「ねばならない」の声が大きく「きちんとしなければ」と考えてしまうことです。
できないことは罪だと考えてしまい、できない自分に落ち込み続けます。
では、いい意味ではどう作用するのか。
それは「真剣に取り組むことができる」ことです。
例えば私が片づけの方法をお伝えしたとき、真摯に向き合って取り組むことができるのは真面目だからです。

「片づけなきゃ」と思い、この文章を読んでいる方はきっと真面目な方だと思います。
どうぞあなたの「真面目さ」を「真剣さ」として、片づいた部屋での生活を手にいれてくださることを願っています。

2018/11/16